富士の湧水が流れる三島

2011・9・3〜7
 絵友達に誘われて、東北大震災の被災地宮城県へ絵手紙教室ボランティア行くことになった。その前に5日間の研修を受けることになり静岡県の三島市へ。出発日は台風12号の影響で約2時間ほど遅れて会場に着く。それから研修終了の7日まで朝から晩まで講義や実践見学と久々に学生に戻ったような時間を過ごしました。その間台風の余波で雨の日がつづきました。せっかく三島まできたのだから授業が始まるまでの早朝時間を有効利用、三島市の中心をスケッチブック片手に散策を楽しみました。最終日は正午で研修が終了、絵友達二人を誘って伊豆の修善寺まで足を伸ばしてみました。

 静岡県三島市は20年ほど前に伊豆旅行に来たとき降り立っただけ、市内散策は初めてでした。

 毎早朝、鬱陶しい小雨が降る中、三島駅南側に広がる中心地をスケッチ散策しました。

 歩き回った範囲を判りやすくするため町中にあった観光案内図を貼り付けました。

 毎朝、夜明けを待って早朝5時半過ぎに駅前のホテルを脱出する。

三島駅南周辺の観光案内図(地図上の現在地はこの案内板のあったところ、楽寿園入り口です。)


愛染院跡の溶岩塚
地図にある「愛染の滝」の場所です。
愛染院跡の溶岩塚(市指定天然記念物)

   三島溶岩は粘性の小さい玄武岩の溶岩で、富士山から約40km流下してきて、表面が押し上げられて小丘となったものです。この溶岩塚は三島溶岩流の末端です。愛染院は、旧市内随一の大寺院であると推定され、ここは寺の庭園の一部と推定されているが定かではないらしい。
 溶岩塚からすぐに緑いっぱい木々の繁る楽寿園の正面入り口がある。散策してみたいが早朝なのでもちろん営業はしていない。5日間も近くのホテルに滞在したが、とうとう入園するチャンスがなかった。
 大通りを挟んで向かい側にも公園がありました。ここは自由に歩ける。清らかな水が流れる白滝公園でした。翌日の研修会で半日実践学習があり、このとき案内のボランティアの方から、この道路ができるまでは楽寿園とつながっていたと話されていました。



大通りに面した楽寿園の正門


流水があちこちにある白滝公園
このあたりは早朝散歩する人が多い。



白滝公園を出ると横に桜川がながれている。
水源地は近くにある菰池公園、ここの湧水が水源です。



白滝公園から通と民家の間を流れる桜川
この川は三嶋大社の少し手前までつづいている。


      桜川沿いにあった文学石碑

 それぞれ有名な作家が三島の町を表現していて、なかなか面白かった。作家が活躍した時代の三島の雰囲気を感じさせてくれる。読みながら三島の雰囲気を楽しめたのでここにアップしました。



「東海道中膝栗毛」
      十返舎一九 享和二年(1802年)初刊

 日も暮れに近づき、入り相の鐘かすかに響き、鳥もねぐらに帰りがけの駄賃馬追ったて、とまりを急ぐ馬子唄のなまけたるは、布袋腹の寂しくなりたる故にやあらん。両側よりよびたつる女の声々・・・・
女「お泊りなさいませ、お泊りなさいませ」
弥次「エエ、ひっぱるな、ここを放したら泊まるべい」
女「すんなら、サア、お泊り」
弥次「あかんべい」
・・・・喜多「いい加減にせい、此処へ泊まるか」
女「サア、お入りなさいませ、お湯をお召しなさいませ」
弥次「ドレ、お先に参ろう」・・・・と、はだかになりてかけ出す。
女「モシ、そこは雪隠(せっちん)ござります。こっちへ・・・」
弥次「ホイ、それは」と湯殿へゆく。



「箱根と富士」 若山牧水 (大正九年作)

 宿はづれを清らかな川が流れ、
其処の橋から富士がよく見えた。
沼津の自分の家からだと
その前山の愛鷹山(あしたか)が
富士の半ばを隠しているが、
三島に来ると愛鷹はずっと左に寄って、
富士のみがおほらかに仰がるるのであった。
克明に晴れた朝空に、
まったく眩しいほどに その山の雪が輝いていた。



「老(アルト)ハイデルベルヒ」 
      太宰 治(昭和十五年発表)より


町中を 水量たっぷりの澄んだ小川が
それこそ蜘蛛の巣のやうに
縦横無尽に残る隈なく駆けめぐり、
清冽の流れの底には
水藻が青々と生えて居て、
家々の庭先を流れ、縁の下をくぐり、
台所の岸をちゃぶちゃぶ洗い流れて、
三島の人は 台所に座ったままで
清潔なお洗濯が出来るのでした。



「裾野の水、三島一泊二日の記」 
  司馬遼太郎 小説新潮 昭和六十一年一月掲載


この湧水というのが、
なんともいえずおかしみがある。
むかし富士が噴火してせりあがってゆくとき、
溶岩流が奔って、いまの三島の市域にまできて
止まり、冷えて岩盤になった。
その後、岩盤が、ちょうど人体の血管のように
そのすきまに多くの水脈をつくった。
融けた雪は山体に滲み入り、水脈に入り、
はるかに地下をながれて、溶岩台地の最後の縁返(はし)
である三島にきて、その砂地に入ったときに
顔を出して湧くのである。



透き通った桜川の水面を鴨が泳いでいる。
忙しく足をバタバタさせているが、流れが速くて
進まないのがおかしい・・・・


三嶋大社
この神社で「源頼朝」が出陣の折祈願したという。
なかなか立派な本殿と広い境内、早朝から参拝する
人が多い。6時を合図に何処から現れたのか大勢の人が
一斉に体操をはじめる。太極拳をする台北の朝の光景を
を思い出してしまいました。


               源兵衛川

 この川の源流は三島駅前の楽寿園内の小浜池の湧水です。広瀬橋(下のスケッチ)下流は、農業用水のための人口の川で温水池まで1.5km続いています。川名の由来は、この計画を立て、河川工事に深い関わりをもった寺尾源兵衛からです。豊富であった水量も、昭和35年頃から上流での企業の水の汲み上げなどが原因で水量が激減、川の汚れもひどくなったと案内の方から聞く。平成2年に農林水産省の農業水利事業の一環として環境整備事業の指定を受けて整備され、いまは市民の活動で昔のような美しい水辺環境が維持されています。今回の研修の主催者「グランド・ワーク三島」というNPO団体が中心になって維持管理、実践コースに入っていました。


広瀬橋からの源兵衛川(上流方面)



源兵衛川

早朝散歩や研修会の実習でもこの川沿いを散策しました。
雨が続いたため遊歩道の一部水が水中に。中を歩いたがとても冷たかったです。
きれいな冷たい水が梅花藻を育成していると説明を受ける。




広瀬橋からの下流にある源兵衛川
どこも整備がいきとどいている。


湧水が湧き出している雷井戸
こんな湧水が町中のあちこちにありました。
きれいに整備されている蓮沼川(宮さんの川)
ここもグランドワーク三島の活動エリアでした。




伊豆国分寺
奈良・滋賀・京都から見るとお寺が木造のところが
ほとんどなくてコンクリート造り、なにか味気ないなあ・・・


国分寺本殿裏にある国分寺塔跡






なぜか歩いた地区ではこんな古い家はこの家一軒でした。




湧き水が造っている菰池(小さな公園になっている)

早朝は気持ちがよい、散歩する人、ジョギングする人、犬を連れた人、結構早朝散歩する人が多い。
スケッチしていたら話しかけてきた人に富士山の見える場所を教えてもらって東の大場川に向かう。





これは東方面の眺め。箱根方面の山だろうか?
高台へ登ってみたが富士山の方向は見通しがない。



最終日の早朝散歩でも富士山は雲の中、
わずかに見える裾野で富士山とわかる。



大場川から伊豆半島の山を望む。



三嶋大社の近く、民家かなと思って近づいてみると
暦師(こよみし)の館でした。
                       三嶋暦師の館
                     (国の登録有形文化財)
 この館は日本でも数少ない暦師(こよみし)の一人、河合氏の家でした。この地は三嶋大社の神領域でしたが、三嶋大社と関係の深い社家の一人河合氏の先祖が暦師として代々三嶋レキの印刷・販売を行ってきました。徳川幕府が暦を編集するようになるまでは、河合氏が独自に暦を計算し、編集・印刷・販売をしていました。現在の建物は安政地震(1854年)によって壊れた後に、当時の韮山代官、江川太郎左衛門が移設したものです。
暦師なんていう職業があるなんて、いままで全然知りませんでした。



9月3碑〜7日まで、5日間の研修がやっと終わってほっとする。今日のこの最終日研修は12時過ぎで終了。
午後の帰宅する新幹線のダイヤをチェックしてから、仲間二人を誘って三原から30分ほどで行ける修善寺へ・・・・
やっとお天気も回復してきてスケッチ散策ができそう。でも晴れたら強い夏の太陽光線がふりそそぎ、やたら暑くなる。



修善寺駅で出発を待つ特急「踊り子号」
三島からJR線に入って終点の東京まで走る。




修善寺へ向かう「伊豆箱根鉄道」の車窓からの富士山
 5日間三島に滞在したが雨の日つづいて、富士山を見ることが出来ませんでした。この日は午後から快晴となり、初めて富士山が顔を出してくれました。


駅から温泉街までは2.5km、時間があったら歩いてみるが・・・
もったいないけど修善寺駅からタクシーで行くことにする。

修善寺の温泉街





川中にある独鈷の湯(とっこのゆ)
修善寺の代表的な光景です。
独鈷の湯の後ろ側に、20年ほど前に伊豆旅行で泊まった新井旅館が見えて
なつかしいなあ。でも玄関は和風の建物でしたが・・・




温泉につかる時間がない、独鈷の湯で足湯して
ちょっぴり温泉気分に浸る。




なつかしの新井旅館を訪ねてみました。
玄関はそのときと変わらない風格のある
木造建屋でした。

スケッチ二枚ほどしたら帰りの時間が迫ってくる。
とにかく修善寺にお参りすることに・・・浴衣姿の若いカップルが本殿の前で写真に入ってくれました。



修善寺に来るとき、車窓から富士の見える場所を確認していたので
帰りに「大場駅」で途中下車する。そのために乗り放題キップを購入してました。

大場からの富士山



大場駅で下車したが住宅街で富士山をスケッチできる場所がなかなか見つからない。
同行の二人を離れてあちこち町中を歩いたら、ちょっと高くなっている堤防にでる。
やっと素敵な富士山の見みえるも位置が見つかってラッキーでした。

このページ見てくれた人は、ほんとうに研修に参加したのか疑うかもね・・・
ちゃんと研修のハードスケジュールはこなしましたよ(^.^)